中国系の外資系企業で働く
ここでは、中国系企業の特徴や魅力、デメリットなどについて詳しくご紹介していきます。中国系企業に興味をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。
中国のマーケット状況
中国は、2011年現在の名目GDPでアメリカに次ぐ世界第2位、アジアでは日本を上回る第2位の経済大国となっています。一人当たりの名目GDPとしては182ヶ国中90位と世界水準と比較して決して高いとは言えませんが、GDP成長率は高い水準が続いており、今や世界経済を考える上で決して軽視することができない存在へと成長しています。
中国は豊富で安価な労働力を武器に、経済特区や開発特区などエリアを限定する形で積極的な海外投資の受け入れを実施し、90年代以降、急激に成長を遂げて来ました。
急速な経済成長の反面、都市部と農村部における格差の深刻化や経済成長にインフラが追いつかず、製品の品質が担保できない、環境問題が多発するなど様々な課題を抱えています。
また、今までは生産拠点としての魅力が強かった中国も、経済成長により徐々に賃金水準が上がり始めており、他の東南アジア諸国と比較してアウトソーシング・オフショア先としての魅力は失われつつあります。
しかし、その代わりに中国では強い消費意欲を持つ膨大な数の中産階級が誕生し始めており、今後は中国国内の内需に向けた産業の成長が期待されています。最近ではサービス・情報通信など第三次産業の成長率も非常に高く、世界最大の市場として引き続き注目度は高いと言えます。
中国系企業の特徴
中国系企業の主な特徴としては、下記が挙げられます。
- 国有企業・郷鎮企業・外資企業が存在する
- 一部の国有企業は、国家戦略的に中央企業として位置づけられている
中国では、社会主義の枠組みの中で私営や自由取引を認める、社会主義市場経済という体制がとられています。そのため、最近では市場開放が一段と進んでいるものの、企業の枠組みとしては大きく国有企業、郷鎮企業、外資系企業に分けることができ、それぞれによって企業の形態は大きく異なっています。
国有企業
中国の中央政府や地方政府の傘下にある企業で、かつては国営企業と呼ばれていましたが、所有と経営の分離が定められた1992年以降は国有企業と呼ばれています。
郷鎮企業
地方自治体の郷・鎮が経営する共同経営企業や個人経営企業のことを指し、既に国有企業よりも従業員数は多くなっています。
外資系企業
もっとも市場主義経済が機能しており、経済開放区等にみられる企業形態で、外国資本との合弁企業や合作企業、100%外資の独資企業から成ります。
中国系の代表的な企業
日本において知名度が高い中国系企業としては下記が挙げられます。
- ハイアール・グループ
- レノボ
- ファーウェイ・テクノロジーズ
- サンテックパワー
- 百度
- 新浪
- 青島ビール
ハイアール・グループ
ハイアール・グループは冷蔵庫や洗濯機などの白物家電やテレビ、エアコンなどの家電製品を中心に販売しているグローバルメーカーで、現在世界165ヶ国以上に展開しており、従業員数は50,000名以上、2008年度の売上高はグループ全体で1220億元(約1兆8,300億円)、白物家電ブランドマーケットシェアとしては2010年時点で世界第1位となる、中国を代表する企業の一つです。
レノボ
レノボ(Lenovo、聯想集団)は中国を代表するPCメーカーで、2004年にはIBMのPC事業部門を買収したことでも有名です。2011年現在の世界市場シェアは第1位となっており、IBMより引き継いだブランド「Think」シリーズの「ThinkPad」などが有名です。
日本では、IBMのPC事業の買収に伴ってレノボ・ジャパン株式会社が日本法人として発足しましたが、2011年にレノボが51%、日本電気(NEC)が49%を出資する形で合弁会社「Lenovo NEC Holding B.V」が発足しています。
ファーウェイ・テクノロジーズ
ファーウェイ・テクノロジーズ(Huawei Technologies Co. Ltd.)は、中国の広東省に本社を置くグローバル通信機器メーカーです。通信機器の研究開発や製造、マーケティングに特化したソリューションカンパニーとしてグローバルに展開しており、売上高の75%は海外からとなっています。2010年度の売上高は1,852億元(約2兆2,965億円)と、エリクソンに次いで世界第2位の規模を誇っており、モバイル・ブロードバンド製品では世界シェア1位を誇っています。
2010年2月にはアメリカの著名なビジネス誌「ファスト・カンパニー」において「Most Innovative Company Ranking(世界で最も革新的な企業ランキング)」にてFacebook、Amazon、Apple、Googleに次いで第5位に選ばれるなど、世界的な注目を浴びています。
日本における知名度はあまり高くありませんが、グローバルマーケットでは非常に有名な企業の一つです。
サンテックパワー
サンテックパワー(尚德太陽能電力有限公司、Suntech Power)は中国最大手の太陽電池、太陽光発電システムメーカーです。サンテックパワーは世界80ヶ国に展開しており、太陽電池の生産量としては世界第1位を誇るグローバルカンパニーで、価格面・コストパフォーマンスの高さを武器に太陽光発電という成長市場でグローバルシェアを獲得しています。
日本においては、2006年に太陽光発電製造・販売大手のMSKを傘下に収め、サンテックパワージャパン株式会社として展開しています。
百度
百度(バイドゥ・Baidu)は、中国でトップシェアを誇る検索エンジンサービス会社で、全世界で見てもGoogleに次いで第二位のシェアを誇ります。検索エンジン市場においてはほとんどの国でGoogleがトップシェアを誇るなか、韓国のNaverやロシアのYandexなどと同様に、国内シェアでGoogleを凌ぐ数少ない検索エンジンサービス会社となっています。
日本でも2006年にバイドゥ株式会社を設立し、2008年以降は本格的にサービス展開をしています。
新浪
新浪(シンラン・SINA Corporation)は上海に本社を置くインターネットサービス企業で、ポータルサイトの「新浪(SINA.COM)」やミニブログ「新浪微博(シンランウェイボー)」などを運営しています。
新浪の登録ユーザー数は2012年に5億人を超えたと発表されており、中国最大手のメディア運営会社として中国国内では非常に知名度が高い企業となっています。
青島ビール
青島(チンタオ)ビールは、1903年に山東省の青島で製造が始まったビールブランドで、現在では世界50ヶ国以上で販売されているグローバルブランドとなっています。
1999年には日本のアサヒビールと合弁会社を設立し、中国国内向けの「スーパードライ」の現地生産・販売なども行っています。日本でも有名なブランドなので、ご存知の方も多いかもしれません。
中国系企業で働くメリット
- 成果主義なので、実力次第で昇進・昇給スピードが早い
- ビジネスレベルの中国語が身に付き、キャリアの武器となる
- 中国流のグローバルビジネスの戦い方が学べる
中国系企業の多くでは成果主義が徹底されており、結果を出せばすぐに昇進、昇給ということは珍しくありません。一つの企業で働き続けるという文化もありませんので、優秀な人材であれば競合他社から高いオファーで引き抜かれるということも良くあります。
また、中国系企業で働くことでビジネスレベルの中国語が話せるようになれば、今後のキャリアにとって大きな武器となります。中国は今やGDPでアメリカに次いで世界第2位、世界最大の市場として注目されており、中国系企業ではなくても、中国向けの輸出入などで中国語に堪能な人材を求めている外資系企業は数多く存在しています。
ビジネスレベルの中国語会話能力は英語力より希少性が高く、外資系企業や日系の大手グローバル企業で転職する上で大きなアドバンテージとなることがあります。
そして、中国系企業の中でもグローバルにビジネス展開をしている会社に転職すれば、中国流の経営スタイルやビジネス慣習を学ぶことができます。
中国系企業の最大の武器は豊富で安価な労働力がもたらすコスト競争力にありましたが、最近ではアフリカ・中南米・アジアなど新興国市場でも高いシェアを持つ中国メーカーなども増えてきており、マーケティングやオペレーション、ローカライズなど様々な側面で日本企業が敗れるケースも増えてきています。
グローバル市場における中国流の勝ち方を学ぶことは非常に良い経験となるでしょう。
中国系企業で働くデメリット
中国系企業で働く代表的なデメリットとしては、下記が挙げられます。
- 中国流のビジネス慣習に合わせる必要がある
- 給料が安い
- 雇用の流動性が高い
中国系企業で働く場合には、中国流のビジネス慣習に合わせる必要があります。上司や同僚に対する接し方や交渉ごと、プライベートでの付き合い方など、中国独特のビジネス慣習に馴染める方でないと、なかなか働くことが難しいでしょう。
また、中国系企業の日本法人ではなく、中国現地法人で働く場合などは、給料もかなり安いのが一般的で日系企業の3分の1程度となることも珍しくありません。
中国は物価が安いため、中国で生活する場合にはそこまで大きなネックにはならないかもしれませんが、給与アップを目指して転職する場合などは、よほど特別な技術やスキルを持った方でないと難しいかもしれません。
中国系企業で働くためには?
中国系企業で働きたい場合、いくつかの選択肢があります。最近では上海や北京など、キャリアアップのために中国現地での就職・転職先を探している日本人の方も数多くいますし、グローバルにビジネス展開している中国系企業の日本法人で働いている方も数多くいます。
中国系企業の日本法人における求人数は欧米系の外資系企業と比較するとそこまで多くないかもしれませんが、中国現地の求人であれば、求人は山のように存在しています。
本格的に中国語を身に付け、今後のキャリアアップに活かしていきたいという方は、実際に中国と市場と成長を肌で感じるという意味でも、数年間限定して中国現地で働いてみるというのも一つの魅力的な選択肢となるでしょう。
中国系企業で求められる語学力
中国系企業で働く場合、日常レベルの中国語は必須となるケースが多いですが、実際に入社してから中国語を磨くという方も数多くいらっしゃいます。また、英語力については必須となるケースはありませんが、もし英語も使えるのであれば、選択肢は大きく広がります。
中国のトップグローバル企業の場合、日本の大手企業とは違い、マネジメントクラスともなれば英語が話せて当たり前ということもありますので、中国語力だけでなく英語力も磨いておくとよいでしょう。
中国系企業の年収レンジ
中国系企業の大手企業で、日本法人で採用される場合であれば、20代で400~600万程度、30代で600万~900万といったイメージとなります。専門技術職やマネジメント層になると1,000万円以上の求人も存在しています。
現地で現地法人に採用される場合には、日本の2分の1~4分の1ぐらいの給与となることもあります。生活コストが低い分、安くてもそこまで大きな問題はありませんが、給与面という意味ではあまり魅力的ではありません。
中国系企業はこんな方におすすめ
下記に当てはまる方は、中国系企業への転職がおすすめです。
- 結果次第で評価される職場で働きたい方
- 中国が好きな方・中国語を活かして仕事がしたい方
- 外資系企業におけるキャリアのチャンスを広げたい方
- 中国流のビジネススタイルを学びたい方
ビジネスレベルの中国語を活用できるようになれば、中国系企業に限らず、グローバルな人材市場においても市場価値が高まりますし、中国でビジネス経験がある人材を獲得したい企業は星の数ほどありますので、ステップアップの意味も込めて数年間中国系企業で働く、というのはとてもおすすめができるキャリアの選択肢です。
中国系企業に強い転職エージェント
中国系企業に強い転職エージェントとしては、下記が挙げられます。
中国系企業の日本法人における求人はほとんどが非公開求人となっています。大手メーカーの求人としてはグローバル関連の求人や技術職関連の求人が豊富に存在しています。また、上記の転職エージェントでは中国現地の求人も数多く取り扱っていますので、現地で転職をお考えの方にもおすすめです。
リクルートエージェントは非公開求人数が網羅されており、中国エリアの求人も豊富に保有しているので、ぜひとも登録しておきたいところです。アデコも世界最大の総合人材会社として多数の外資系求人を保有しており、おすすめです。また、JAC Recruitmentも中国に拠点を展開しており、外資系企業に特化したコンサルタントの質が非常に高い点が魅力です。まずは上記3社全てに登録してみて、転職活動を進めながらメインの転職エージェントを絞り込んでいく、という形が良いでしょう。ぜひ有効に活用してみてください。